2009.11.10

安物の老眼鏡が"宝物"になった日

10月21日、東京で開かれた「和酒と食文化を考える会」という利き酒会へ出かけました。
20社ほどの蔵元さんが集まった小規模な会でしたが、本当にいい利き酒会でした。
小さな蔵もあれば、中規模な蔵もあり、また、僕が以前から知っている酒もあれば、初めて出合えた酒もあり。
そして、さまざまな肴も用意されていました。

僕はあまり何も考えずに出かけて行ったのですが、後から思い返してもとてもすばらしい。
どうしてなのかな、と考えてみたところ、一つ確実に言えることは、参加されていた蔵元の皆さんが、
それぞれの酒造りに信念と自信を持っていらっしゃるということにあります。

でも......、どんなにすばらしい利き酒会でも、いつも何かしらの「事件」は起こるものです。

僕は張り切って各々のテーブルを回り、すべての蔵元さんのすべての酒を利いていました。
そして、残すはあと2テーブルに。
まず向かったテーブルは山形・冨士酒造の「栄光冨士」でした。
僕はわりと「栄光冨士」を飲む機会がよくあるのですが、利き酒は何度やってもいいもの、と利き酒に臨みました。

こういう利き酒会では、特に真っ昼間ですから、皆さん利き酒をしたら「はき」に酒を吐き出します。


2009blog11b-1.JPGそうしないと、かなり早い時点で利き酒することができなくなってしまいますから(笑)。
僕も酒を口に含んで利いたら、もちろん「はき」へGO!
「はき」は各テーブルの横に1つずつ配置されていました。

 

誰しも年齢を重ねると、小さな文字が読みにくくなりますよね......。
僕もここ数年すっかり老眼が進み、酒の情報など、
小さな小さな文字で書かれている冊子を読むときは老眼鏡を使うようになっています。
でも、まだあまり使い慣れていず、
そもそも安い物なので僕の顔にしっかりフィットしているわけでもない。
いつもブカブカで、バランスもとれていません。

すると、なんと、こともあろうに僕は「栄光富士」を吐き出すときに、
その老眼鏡を「はき」の中へぽちゃんと落としてしまったのです。
うわあぁぁぁぁぁッ!

すかさず「栄光富士」の米山さんが駆け寄って来て、「うわぁ~!」と叫ぶや一言「取りましょう!」。

「い、いいんです......、忘れてください! また新しいのを買いますから! 
そんな......取るなんて......ぬるっとしているし......、
米山さんお客さんもいらっしゃいますし」とお断りしてみたけれど、彼は迷うことなく
主催者の一人の方に手伝いを頼み、「はき」をえっちらおっちら運んでいってしまったのです。
現場に残された僕は、恥ずかしい気持ちと闘いながらバツが悪そうに待っていました。

 

2009blog11b-2.JPG5分ほど経つと、米山さんは眼鏡を片手に戻ってきました。
「はき」は別の方が元の位置へ。
そして僕は何度も何度もお礼を言い、次の最後のテーブルへと進んだのです。
ふと眼鏡を見るとなんと、「はき」へ落とす前よりもぴかぴかに磨かれているではありませんか!

いつもなら「捨ててしまおうかな」などと思ってしまう僕ですが、
米山さんが一所懸命に拭いてくださった眼鏡。

これからもずっと大切にします!

それから「栄光富士」を、もっともっとたくさん飲みます!!

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コメント

その節は大変お世話になりました!!

あの日の些細な出来事が
ひとつの眼鏡を大切にして頂ける
エコなきっかけになったのであれば
それほど素晴らしい事はありません。

これからも物語のある眼鏡と共に、
栄光冨士をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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プロフィール

ジョン・ゴントナー John Gauntner
1962年、アメリカ・オハイオ州クリーブランド市生まれ。88年、文部省主催の「JETプログラム」で来日し、神奈川県の公立高校で英語を教える。その後、エンジニアとして勤務する傍ら、日本酒を海外へ紹介する活動を開始。98年よりその日本酒の普及活動に専念する。現在は日本酒輸出協会理事、日本酒輸出のコンサルティング、国内外での講演、新聞や雑誌への寄稿、在日外国人のためのSakeセミナーなどを精力的に行なう。著書に『The Sake Handbook』(英語)などのほか、『日本人も知らない日本酒の話』『日本酒がうまい大人の居酒屋』がある。

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