dancyu2009年3月号「日本酒の星」特集号を見て、
このHPに来てくださった皆さん、ありがとうございます。
編集後記と一部内容が重なりますが、
酒肴として最高の「すき焼き」に出会ったので、少しお付き合いください。
久しぶりに「すき焼き」で酒を飲んだ。
dancyu誌でもおなじみのエッセイスト、
向笠千恵子さんが2008年秋に上梓した『すき焼き通』(平凡社新書)を読んだら、
食べたくてたまらなくなったからだ。
本の帯に「名牛と老舗の味を各地にたずね、幸福感あふれる鍋もの、
すき焼きの食文化とその美味の秘密を探る」とあるが、まさに全編、垂涎もの。
ぼくが家で真似をしたのは、「第一章 すき焼きはねぎを味わうごちそう」にあった、
和牛と白ねぎだけを食べる「魯山人のすき焼き」だ。
食通として知られた北大路魯山人と深い親交があった陶芸家の須田青華さんの手によるもので、
昆布と鰹だしに酒を利かせた辛口の割り下を使うのが味の特長だという。
ふだんの割り下より砂糖と味醂を少し控えたものをつくり、
それを鉄鍋にひたひたに注ぎ入れ、まずは肉だけ、焼かずに両面をさっと煮て食べる。
そして、ねぎ。5センチ程度にぶつ切にした白ねぎを立てて煮るのが魯山人流だ。
和牛のうま味が出た割り下がだんだんと昇ってきて、ねぎの切り口から噴き出したら食べごろだという。
これだと若干、ねぎのまわりは生っぽくて辛味が残る。
が、逆に芯の甘味が強調されて素晴らしかった。
肉を食べている間は、それほどでもなかったが、ねぎに移った途端に酒が飲みたくなった。
肉にはご飯もいいけれど、ねぎには日本酒だ。
和牛のおいしさを湛(たた)えた甘辛味の白ねぎは、いくらでも酒が飲める味わいである。
酒は、吟醸系よりちょっと骨太なものがいい。
年末にいただいた灘の酒があったので、大きなぐい呑みにたっぷりと注ぎ、
がぶがぶ飲みながら食べたら実に幸せだった。


